愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「これに勝つな、とは我が妻は無茶を言ってくれる」
「稼ぐべき時間がわからないのも無茶なポイントです」

 勝たず、負けず、被害を出さず。
 稼ぐ時間は両陛下奪還を完遂するまで。

  
 素人同然の寄せ集め集団だが中にはもちろん腕の立つ者だって混じっているだろう。

“流石にジークほどの傭兵が何人も雇われているとは思えないがな”

 ふぅ、とゆっくり深呼吸をしスラリと剣を抜く。
 そのタイミングで茂みから突然男が飛び出し斬りかかってきたのを剣先で弾き、よろけた相手を蹴っ飛ばした。

「何日間でも遊んでやる……!」
「では我々は新人騎士の訓練の場として使わせて貰いましょうかね」

“俺は必ず約束を守る、だからセヴィーナも絶対守れよ”

 彼女の言葉を思い出しながら、そう強く思ったのだった。


 ◇◇◇


「このメンツで一番顔バレしちゃまずいのってどう考えても姫様ですよねぇ」
「ジークもランドルも同じくらいまずいとは思うけどね」

 話し合いをしたその日の晩出発した私たちは、三日の時間を要しメイベルク王国の国境近くまでやってきていた。
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