愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「あ、そこ? 安心して、ちゃんと中に訓練着を着込んでいるから」
「そういうことを言ってるんじゃありません!」
「えぇえ……?」

 きゃんきゃん怒るミィナにたじたじしていると、ごほんと咳払いしたベルモント卿がこちらに近付いてくる。

「訓練を見学なさるんじゃなくて、まさかご参加されるおつもりなのでしょうか?」
「私の腕は私の護衛騎士だったジーク仕込みだからご安心を」

 困惑顔の彼を安心させるようににこりと笑うと、ざわついた騎士たちの誰かからボソリと「接待とかなんで俺らが……」なんて不満気な声が聞こえた。

“接待、ね”

「今言ったのは誰かしら」

 私がそう声を上げると、何人かの騎士がビクッと肩を跳ねさせ目を反らす。
 そんな彼らの中から、一番最後まで私の方へ不服そうな視線を向けていた一人の騎士を指差した。

「いいわ、私と模擬戦をしましょう。先に一撃与えた方が勝ちでどうかしら?」
「本気ですか?」
「もちろん。貴方が勝ったら大人しく見学を、私が勝ったら訓練に混ぜて貰う。どう? それとも私程度に負けたなんて恥ずかしい?」
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