愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 何故ならこれは短期決戦なのだから。

 
 いよいよ直前に迫ったという事実に緊張から思わず私が腰に差した剣を握ると、その剣に気付いたジークがまじまじと眺める。

「いい剣ですね」
「あ、この剣は」

 少し古いが手入れは欠かさずされていた剣。
 ジークやランドルには少し小さく短い長剣だが、私の手にはむしろそこがよく驚くほど一瞬で手に馴染んだ。

「アルドが昔使っていたやつで」

“私が剣を持っていないって聞いてくれたのよね”

 物はいいやつだから、と渡してくれたこの剣は、手入れが欠かされていないことから大事なものなのだとすぐにわかった。

「あー、俺だと思って持っていてくれって?」
「い、言われてないわ!?」
「は? 自慢ですかそうですか」
「ランドルまで!」

 私がキッと睨むと、二人が小さく吹き出す。
 そんな二人に釣られて私も吹き出すと、さっきまでの緊張が嘘のように呼吸がしやすくなったことに気が付いた。

“二人がいてくれてよかったわ”


「今から私たちはリヒテンベルンの騎士よ、行くわ」
 
 門番を倒してしまったので見つかるのは時間の問題。
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