愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「それだけこの国にリヒテンベルン兵が入ってるってことでもありますけどね」

 あっさりとそう言い換えられ思わず呻く。
 ランドルの言うことは正しく、確かに私たちが歩いていても咎められないほどこの国にリヒテンベルン兵がいる、つまり手を組んでいるということでもあった。

“便利に使われているだけなのに”

 それはリヒテンベルンの姫として生まれた私としても、グランジュの王太子妃としてもなんだか少し複雑な気持ちになった、その時だった。

「それよりまずは両陛下の居場所を見つけないと」
「お前たちは何でここにいる?」
「!」

 突然後ろから声をかけられ思わずビクッと肩を跳ねさせた私を隠すように、ジークとランドルが前に出て振り返る。
 私もそんな二人の間から覗くようにそっと振り返ると、そこには同じローブを着たリヒテンベルン兵がいた。

「俺たちの持ち場はそこじゃないだろ」
“バレ……てはないわね”

 どうやら同じリヒテンベルンの人間同士も全員が顔見知りではないことにホッとする。
 それだけ沢山来ているのか、それともお金で傭兵を雇っているのか。
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