愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「本当にこの先の客室にいらっしゃるといいけどな」
「いるわよ、ここで万一私に何があったらグランジュを敵に回すもの」
「自国を挟む両大国から敵意を向けられるとか最悪の事態は避けたいですもんね」
「こいつら突然背中から襲ったりしない、よなぁ」
「流石にそこまで馬鹿じゃないわ」
 
 細かい打ち合わせをするために何度もメイベルク王国へ足を運んでいた父から聞いた両陛下の滞在先へジーク、ランドルになんと護衛としてリヒテンベルンの兵たちと共に向かう。
 父を父として信頼はしていないが、自国を挟む二つの大国のうち確実に庇護してくれる方をこの局面で騙すほど愚かではないだろうとは信じていた。

“金の薔薇が飾られた貴賓室……あそこだわ!”

「ジーク、突撃するわよ」

 目立つことは避けたかったが、散々父と揉めてしまった後のせいでメイベルク王国側に報告もいっているだろう。
 事は一刻を争うと判断した私たちは、両陛下の安全な脱出を最優先し教えられていた部屋の扉を蹴破る勢いで飛び込む。


「な、何者だお前たちは!」
「!」

 そう叫んだ護衛騎士の奥に二つの人影があった。
< 322 / 340 >

この作品をシェア

pagetop