愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 残念ながら外交も社交もほぼしたことがなかった私は両陛下の顔をちゃんとは知らず、今そこにいる二人が本物か確かめる術などないはずなのに。

“赤褐色の髪色はお義母様譲り、顔立ちとアーモンドカラーの瞳はお義父様に似たのね”

 私が最も恋しく思っている彼の面影を見て私はじわりと目頭が熱くなった。


「詳しくお話している時間はありません、ですがここにいるのは危険なのです! すぐにグランジュへと戻りましょう!」

 滲みそうになる視界をグイッと拳で拭った私が両陛下へと声をかけると、警戒しながらも怪訝そうな顔で二人が顔を見合わせる。

「一体君は、それにこの騎士たちはリヒテンベルンの騎士のようだが……」
「騙されてはなりません!」
「!?」

 いざ説得をし脱出、しかしそのタイミングで声を張り上げながら現れたのは――

「あの髪色に小太りな体型は……」

 ――メイベルク王国の、国王だった。
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