愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!

40.手を繋いで、改めて

“まさか国王自らが出てくるだなんて!”

 しかもこちらは信頼どころかまだ名乗りすらしていない状態だ。
 自身を貴賓として招いている友好国のトップと、自国に嫌がらせのような小競り合いを仕掛け続けている弱小国の騎士を連れて飛び込んできた女。

 どちらが信頼に足るかなんて明白だった。

 最悪なタイミングだと思わず舌打ちしそうになる。

「これは一体……」
「賊が入り込みお二人に危害を加えようとしているのです!」
「違います! むしろそれはメイベルク王国の方でしょう!」

 声を張り上げる国王に対抗するよう、私も叫ぶようにそう主張する。
 勝利を確信しているらしい国王のニタニタ笑いが腹立たしいが、今ここで引く訳にはいかず歯噛みする。

“こうなったら力ずくでも二人を脱出させなくちゃ。そうなったら全員無事に、とはいかないけれど――”

 覚悟を決めた私が、指示を出そうと口を開いた時だった。


「――私たちの義娘を賊扱いとは、どういうことか説明をしていただけるだろうか」

 凛とした声がその場に響き、一瞬で場が静まり返る。

「……、え?」
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