愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 それは私に、はじめて本物の両親が出来た瞬間だった。



「あっさり出られて良かったわね」
「拍子抜けですけどねぇ」
「……ランドル、ずっと顔色悪いけど大丈夫?」
「ま、まさか俺が、王太子殿下の、いや両陛下の護衛につくことがあるだなんて」

“それにしても、あの時国王が乗り込んできて良かったわね”

 もちろん国王も騎士たちを連れてはいたが、こちらにはグランジュの近衛騎士にリヒテンベルンの騎士、今は引退したものの名を馳せた傭兵のジークまでがこちらにおり、また説得力を上げようと国王本人が直接乗り込んできたことが逆に仇となり私たちは悠々と城門から外に出た。

 一緒の馬車に、と両陛下からは声をかけていただいた私だったが、今回はお二人を守るために来たからと辞退し現在は馬車を守るようにラオを走らせている。


 リヒテンベルンの兵に見つかった時は心が冷えた。
 父に会った時は心が動かなかった。

 ――そんな私を、『むすめ』と呼んでくれる人がいると知った時は心が震えた。
 

「早くアルドに会いたいわ」

 無事に帰り、約束を守ったと伝えたい。
 そして今日の話も聞いて欲しい。
 
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