愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 きっとアルドも無傷で待っていてくれているから。

 逸る気持ちを誤魔化すように大きく深呼吸をした私は、ただただ真っ直ぐ、“私の国”であるグランジュの方を見つめ歩を進めたのだった。


 ◇◇◇


 帰国してからは慌ただしかった。

 モニカは私とアルド、そして無事に帰国した両陛下を見て大泣きをし、それと同時にモニカの婚約を知った陛下は娘が突然嫁ぐことを知って同じく大泣きをした。

 またモニカとクリストフ卿が得た情報を元にダレアが裏取りをし、とある侯爵家がメイベルク王国と繋がっていたことが明らかになったものの、簡単に尻尾を切られたらしくメイベルク王国への抗議はうやむやになってしまっている。

“それに、両陛下の暗殺やグランジュを攻めようとしていたこともうやむやにされてしまったのよね……”

『もし本当にそんな計画を練っていたのならあの時お二人を帰すことはしなかったのでは』なんてもっともらしいことを言われればそれ以上こちらから言えることはなく、現在はリヒテンベルンに何か証拠が残っていないかの調査中だった。

「それにしても本当に狡猾なんだから」
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