愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 メイベルク王国の裏取りが進めば改めて抗議もするし、そもそも同じ大国同士でもメイベルク王国とグランジュでは戦力の差があるのだ。

 今回の件で暫くは大人しくせざるを得ないメイベルク王国に、今回の私の脅しも効いたのかリヒテンベルンからの動きも当然無く、少なくとも当分は穏やかな時間を過ごせそうでホッとする。


「本当に終わったのね」
「長かったようであっという間だったな」

 穏やかに微笑むアルドに釣られ私からもくすくすと笑いが溢れる。

 それぞれの戦地へ向かう時に交わした口付けをなぞるようにそっと口付けを交わした私たちは、さっきまでまるで会えなかった時間を埋めるように話していたことが嘘のようにお互い口を閉ざした。


「……寝るか」
「そう、ね。いい時間だもの」

 チラッと視界の端に映るのは執務机の後ろにある大きな窓。
 そこからはまだ時間が早いことを示すように夕陽が射し込んでいて。

“はじめてって訳じゃないのに”

 ドキドキと痛いほどに跳ねる心臓を押さえつつ、アルドに手を引かれるままついていく。

 向かう先は当然彼の寝室だった。
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