愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「あら? あまりにもあっけなく一撃入れさせてくれたから接待してくれているのかと思ったのだけれど、そう言うってことは貴方の実力だったってことね?」

 ふふ、と口元だけで笑ってやると苦々しい顔をした彼はそれ以上言い返してはこなかった。

 
“卑怯でもなんでも戦場では生き残った方が勝ちなのよ”

 高潔な騎士には似合わない泥臭い戦法。
 だが私は、元傭兵として数々の戦場を生き残ったジークの実力を信じているしプライドでは腹が膨れないことだって知っている。

 
「約束通り、訓練に参加しても構いませんよね?」

 まだ不服そうに睨んでいる尻もちをついたままの彼を無視し、ベルモント卿の方へ振り返る。

「なんの騒ぎだ?」
 
 だがそんな私の目に飛び込んできたのは予想外の人物だった。

「アルド殿下!?」
「ここで何をしている」
「な、何って……」

“貴方と恋するための下準備として味方を作りに来たんですけど”

 なんて当然言えるわけもなく。

「夜がどれだけ激しくても対応できるように体を鍛えにきただけですわ」
「なッ」
「すぐにでも求めていただける体になろうかと思いまして」
「ぶっ」
 
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