愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「……はい、姫様」


 ジークにそう告げた私は馬から飛び降り、リヒテンベルンへ背を向けグランジュを真っ直ぐ見つめる。
 
 王族の輿入れが単身徒歩でだなんて前代未聞だが、それでも国境で迎えてくれたグランジュの騎士たちへと精一杯の笑顔を向けた。


「はじめまして、こんにちは。私はセヴィーナ・リヒテンベルン。王太子、アルド・グランジュ殿下へと嫁ぐためにやってきました」


 歓迎されないことなんてわかっている。
 それでも私は、今度こそ家族の愛を感じてみたいから。


「どうぞ、よろしくお願いいたしますね?」
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