愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「好きなの連れてってくれていいよ」
「ありがとう」
「あぁ、でも黒毛のは――」

 にこりと微笑み厩舎へと入る。

“やっぱり王城の馬となると違うわね”

 中を見回すと毛並みを整えられた馬たちが何頭もおり、どの子も健康そうだった。

 その中でも一番筋肉が整っている黒馬を選ぶ。

「この子の名前は?」
「ラオだけど……まぁ、触れてるならいいか」
「了解、ラオ。私たちを乗せてくれる?」

 そっとラオの首筋を撫でると、瞳を細めて顔に鼻を擦り寄せてくる。
 くすぐったいその仕草に思わず笑みを溢した。
 
「もう一頭はどうします?」
「?」

 その黒馬に挨拶をしつつ撫でていると、ミィナにそんなことを聞かれ私は思わず首を傾げた。

「ですのでもう一頭です。馬車は最低でも二頭いないと引けませんが」
「馬車でなんか行かないわよ?」
「え、じゃあ」
「この子に直接乗っていくわ。だって馬車だと小回り利かないし」

 平然とそう伝えると、想定外だったのかミィナがぽかんと口を開いて固まった。

「忘れ物を届けに行くなら確かにそれが最善だな」
「ですよね!」
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