愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「あぁ。殿下は馬車で向かわれたから、同じ馬車だと速度の関係で追い付くのは難しいだろう」
「えぇ、それに殿下の乗られた馬車を見つけたらすぐに対応しなくてはなりませんし」

“見つからないように、って意味だけど”

 目的地が同じなのだ。
 万が一途中で追い付きでもすれば、中を改められるかもしれない。

 そうなるとマズイ、中にいるのは目立たない服に着替えたここにいるはずのない人質。

“それってどう考えても脱走なのよね!”

 あんな啖呵を切っておいて逃げ出す女みたいな評価をされたらそれこそもう挽回のしようがないだろう。

 理想はこっそり視察についていき、こっそり国民の役に立ちつつ私の評判を上げて味方を増やして支持を集め存在感を示すこと。

 そしてゆくゆくはこの国に私の居場所を作ることなのだから。

“その為にはやっぱり小回りのきく馬で追いかけて見つからないようにしつつアルド殿下と一緒に来て別行動をしている体にしなくっちゃ!”
 
 馬番をしていた少年の後押しもあり、選んだ黒馬と唖然としているミィナも一緒に外に出る。
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