愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「どこかにミィナとラオを休ませられる場所はあるかしら」

 街の入り口でうろうろしながら頭を抱える。
 そんな私が不審に見えたのだろう、すぐに一人の衛兵がこちらへ真っ直ぐ走ってきた。

“さ、流石グランジュ、防衛意識が高いわね”

「って、感心している場合じゃなくって!」
「おい、ここに何の用だ?」
「えーっと、それは……」

“無許可の視察です、は怪しすぎるわよね”

 かなり訝しげに私……というよりラオをじろじろと見られ冷や汗が滲む。
 万一アルド殿下にバレればこの計画は水の泡どころか逃亡の冤罪すらかけられるかもしれない。

 そしてそれを理由に即破婚だ。
 なんとしてもそれだけは避けたい。

 どう説明しようか困っていると、私が抱きかかえているミィナに気付いた衛兵がハッとした顔で私たちを交互に見る。

「まさかこの馬……」
「え?」
「いやっ、それよりイースに何かご用だろうか? そちらの女性は……」
「あー、ちょっとスピードを上げて走ったらちょっと彼女が体調を崩してしまったんです。どこかに休ませられそうな広場とかはありますか?」

“べ、別に嘘じゃないわよ”
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