愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「困ったわ、どうやって果物を手に入れようかしら? 勝手に街の木からもぎったらダメよね」

 買えれば簡単だったのだが、そう出来ない以上どこかで果物のなる木を探すしかない。

 ――となれば、王城からこの街までの道中しかない訳で。
 私は意を決して果物を探しに再び外へと駆け出したのだった。

 
 ミィナも景色を楽しんでいるのだと思っていた頃は私も風を感じつつ辺りを見ながらラオを走らせていたので、その道中にそれらしい木がなかったことは覚えている。
 ということは、来た道以外の場所を探さなくてはならない。

「とりあえず街の真ん中を突っ切って反対側を目指してみようかしら」

 始めての街。
 リヒテンベルンでは街へ行く機会などほぼなく、訓練所にジークと籠って体ばかりを鍛えていた。

 そんな私の為にジークは傭兵時代に回った土地の話を沢山してくれて、その中には色んな国があったけれど――


「ここも、とても美しいわ」
 

 どの建物の壁にも飾られている可愛い花。
 植木も多く、緑に囲まれている街中。

 子供たちの遊ぶ声が響き、王都のような高級店が並んだ街とはまた違う活気を見せている。
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