愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 私と男の子の体重を支えられないから。

 どうするべきか、何が最善か。
 そんなことを頭に駆け巡らせた時だった。

「う、わぁぁあ!」
「!!」
「きゃぁあ!」

 ずっと枝に掴まっていたためもう握力が限界だったのだろう。
 男の子の手が枝からずるりと外れ、グラッと体勢が一気に崩れる。
 木の下からも叫び声が上がり――


「へ?」
「……ふぅ、間に合ったわね」

 静寂の中にぶらりと逆さまになった男の子から呆然とした声がひとつ。そして私の口からも安堵の声が漏れた。

「え、え?」
「離さないから暴れないでね。万一枝が折れたら私たち二人揃って真っ逆さまよ」
「ヒッ」

 何が起きたかわからず混乱している男の子へとそう声をかける。

“でも、ここからどうしようかしら”
 
 膝を枝に引っ掛けてぶら下がっていた私だったが、あと少しが届かなかった。
 しかし男の子が体勢を崩したため咄嗟に膝を伸ばし、今の私は力を入れたつま先で枝に引っかかっている状態である。
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