愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「私はこの実を取ったら帰るので、アルド殿下もどうぞお帰り下さい!」
「なんの回答にもなっていないぞ、というかそれ以上登るな! というか動くな!」
「え、なんで……」

 更に登ってくる殿下から少しでも逃げようと悪あがきし私ももう一歩高く登ろうと別の枝に足を掛けると、ビリリと再び嫌な音が響く。
 その音で私のスカートの裾が枝に引っかかっていたことを思い出した。

「だから言っただ……」
「わ、わわっ」
「セヴィーナ!?」

 一瞬バランスを崩した私は慌てて幹にしがみつく。そんな私のいる高さまであっさりと登って来た殿下がサッと手を差し伸べた。

「ほら、危ないから早く掴まれ!」
「えっ」
「えっとはなんだ。もちろん何故イースにいるのかも含め下に降りたら聞くからな」
 
 苛立ったような表情の殿下だが、そんな表情とは裏腹にまっすぐ差し伸べられた手にドキリとする。

“まさか私の心配もしてくれているの?”

 彼が再び木に登った理由が、もしかしたら私を助けるためだったのかもしれないと思うと胸の奥がきゅうっと締め付けられた。
 
 
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