愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 ぶつぶつと呟いている二人に少しムッとしつつミィナへと視線を戻し、果物を彼女の目の前で軽く振る。

「まだ飲む?」

 思い切りブンブンと顔を左右に振るミィナ。

「完全に握り潰してないから食べることも出来るわよ」

 再び思い切りブンブンと顔を左右に振られ、じっと果物を見つめた私は少し残念な気持ちになりつつ半分握り搾られたそれをサイドテーブルへと置いた。

「飲みたくなったらいつでも言ってね」
「は、はい……」
「まだ顔が青いわね、大丈夫かしら」
「顔色の原因はお前のせいな気もするがな」

 しみじみとそんな事を言われ、何か言い返そうかと思っていると、私の横までアルド殿下が歩いてくる。

「専属侍女か?」
「ち、違います!」
「違うのに何故ここにいる?」

 殿下の質問に焦りながら返答したミィナだったが、何故と問われて口ごもった。

“確かにこんな場所まで専属侍女でもない侍女が人質とはいえ仮にも王太子妃に付き添っているなんておかしいものね”

 アルド殿下の疑問は最もだったが、だがミィナは嘘をついている訳ではない。
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