愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 仕方なくミィナを庇うように怪訝な顔をしている殿下の前へ立ち塞がった私が口を開く。

「私にはまだ専属侍女がおりません。ただ、彼女が最も親切にしてくれていたので無理を言いここまで案内して貰ったのです」

“本当はまだここに来てミィナしか侍女を見かけたことがないんだけどね”

 ここで素直に冷遇されています、なんて言いたくなかった私が嘘ではない範囲でぼやかしてそう答えると、若干疑問に思いつつも納得はしてくれたようだった。

「で、そもそもお前たちは何故このイースにいるんだ?」
「し、視察です」
「視察?」
「視察は妃の仕事のひとつでしょう」
「……先日騎士団の訓練場にいたのは?」
「優秀な騎士を鼓舞するのも妃の務めだからです」

 私の話を聞いたアルド殿下がそっと振り返りダレアの方を見る。

「間違いではありませんね。視察先は先日の訓練場で聞いたのでしょう」
「俺は同行を許可してないが?」
「王太子妃の仕事を妃殿下がこなすのに殿下の許可は不要ですね」

 さらりとそうダレアが答え、うぐ、とアルド殿下が口ごもる。
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