愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 まさか後押しして貰えると思わなかった私は思わず口角をあげながら、ここぞとばかりに話を続けた。

「その通りです! 私は自分の仕事を全うしようとしただけなんです」
「無断で同行してか?」
「殿下が気付かなかっただけで、スタート地点も目的地点も同じでした」
「あと、騎士を鼓舞するのはいいが鼓舞するとは一緒に訓練を行うという意味じゃない」
「刺激があっていいじゃない」
「よくないだろ! あの時の騎士たちの顔を見たか?」

 互いに引かずうぐぐと唸る。
 そんな私たちが面白いのか、いつかの執務室の時のようにククッと笑いを堪えながら俯くダレア。そして呆れを通り越してなんだか引いているミィナと、突然現れた王太子に唖然として固まっている衛兵という奇妙な空間が広がっていた。

「えーっと、これはどういう……」

 そんな空気を破るように、恐る恐る衛兵が口を開く。
 彼の仕事を完全に邪魔していることを思い出した私たちは、流石に気まずくなりながら睨み合うのを止めた。


「って、お嬢様!? なんですかそのスカートは!」
「え? あぁ、木に引っかかって破れちゃったのよ」
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