愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 その事実に思わず呆然としていると、気恥ずかしそうにアルド殿下が顔を背けた。

 
「ミィナ、動ける?」
「あ、はい大丈夫です。ありがとうございます」
「私が抱きかかえてもいいけど」
「絶対嫌です」
 
 割といい案だと思ったのだが全力で拒絶される。

“まぁ、それで体調を崩したようなものだものね”

 そんなことを考えながら、行きは私が支えながらの馬の二人乗りだったことを思い出し、すぐにハッとする。

「か、帰り……!?」

 流石にミィナを再び馬に乗せて帰るのは酷というものだ。

「あぁ、そういや二人はどうやって来たんだ? 馬車はなかったようだが」
「馬を借りて二人乗りで来たんですけど」

“でも、行きと同じ方法じゃ絶対ダメよね、一人くらいならアルド殿下の馬車に乗れないかしら”

 もしそれが可能ならミィナも安心だし私としてもとても助かる。
 馬車を追いかけるだけなので私一人で馬に乗っても問題はない。

 だが、アルド殿下たちが馬車で来たのは執務をこなす為だったはず。
 その場所に王城の侍女とはいえ彼女が同席することはきっと出来ない。

 ならばもう、私に出来るのはこれだけだ。
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