愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「は? そりゃそうだろ」
「だって執務するって……」
「体調不良者を押しのけてまですることじゃない」

“それはそうなんだけど”

 けれどそれを当たり前のように言い切れる王族がいるとは思わなかったのだ。
 
「あ……ありがとうございます」

 戸惑いながらもお礼の言葉を伝えると、一瞬だけ彼が笑ってくれたような気がしたのだった。

 

「――って、わ、私だけで乗るんですか!?」
「そりゃそうでしょ。ラオどうするのよ」

 いくらラオが賢いからってラオだけで帰ってこれるわけではない。
 なので、当然馬車にはミィナだけが乗り私はラオに乗って帰るつもりだったのだが。

「王太子殿下にダレア様というこのメンツにただの侍女である私が一人で!?」
「まぁ、そうなるわね」

 ただ事実を告げただけだったのだが、愕然とした表情になったミィナがまた青い顔をする。

“本当に今日どれだけミィナは青くなるつもりかしら”

 ひたすら口をパクパクさせながら首を振るミィナには申し訳ないが、こればっかりはどうしてあげることも出来ない。
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