愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「初夜よ!!」

“待っても待っても来ない初夜!”

 来ないならこちらから行けばいい。
 そう考えた私は、夜も更けたタイミングで私室をこっそりと抜け出した。

 部屋の場所は事前にミィナから聞いていたので問題はない。

 質問した時は一瞬かなり困った顔をした彼女だったのだが、私がまだ持っていた生搾りジュースにすべく握り潰した果物へと視線を動かしてから何度もコクコクと頷き、すぐに部屋の場所を教えてくれた。

“果物を見ていたから、教えたご褒美に欲しいのかと思って渡したけど断られちゃったのよね”

「全部は搾りきってなかったし、まだ食べたり飲んだり出来たのに」

 そもそもこの果物はミィナのために取ってきたのだから、遠慮なんていらなかったのだが。
 
 
 そんなこんなでアルド殿下の私室の場所を知った私は、人の気配がないことを確認しながら廊下を進んだ。
 目指すはもちろんアルド殿下の寝室である。

 人の気配の読み方もジークに習っていたお陰で難なく彼の部屋の前までは来れた私がドアノブを回すと、アルド殿下は鍵をかけていなかったらしく簡単に扉が開き驚いた。
 室内にも人の気配はない。
 
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