愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「不用心ね」

 無断で開けた私が言うのもアレだが、流石に一国の王太子が私室の鍵をかけないのはどうなのだろうか。

“それだけ自分の戦闘力に自信があるのかしら。それとも王城だからという信頼からなのかも”

 確かに国の中心部であり王族の住む王城は国の中で一番安全なのだろう。
 グランジュは国自体も安定していることから謀反などの心配もないのかもしれない。

「だからこそ慈悲をかけて貰っての政略結婚だったんだものね……」

 そんなことを呟きながら足を踏み入れたアルド殿下の部屋は、祖国で見たどの部屋とも違いとてもシンプルにまとめられていた。
 華美な装飾などは一切なく、本当に王太子の部屋なのかと疑いたくなるような機能重視の部屋。

 ここでも執務が出来るようになのか、大きな机も設置され、本棚にはぎっしりと本が詰まっている。
 また机の上にも書類が乱雑に置かれていた。

 流石に鍵もかけていない部屋に重要機密の書かれた書類などはないとは思うが、だからと言って許可なく私が勝手に見ても問題のない書類なのかはわからないので視界に入らないよう注意しながら室内を見回す。
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