愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 すると部屋の奥に大きなベッドを発見した。他の家具同様シンプルなベッドではあるが、疲れがしっかりと取れるようになのかベッドだけは他の家具よりも豪華なものを使っているらしく、ふかふかのマットに手触りだけでも高級とわかる上掛け。
 羽毛だろうか? これまたふかふかの枕がセッティングされていた。

「ここに隠れて待っていればいいのね!」

 気配を読むのも得意だが、気配を消すのにも自信がある私は目的地を発見しニンマリと口角を上げていそいそとそのベッドに潜り込み、彼が部屋に戻ってくるのを待つことにする。
 まるで幼い子供がいたずらを仕掛けているようで、この状況についワクワクとしてしまった。

“いたずらなんて、祖国ではしたことがなかったのに”

 何をしても冷めた視線が返って来たあの頃。
 私は少しでも自分のことを見て欲しくて、子供らしいいたずらではなくひたすら努力するしか選択肢を持っていなかったから。

「まさか、敵国に来てこんなことをするなるなんてね」

 乾いた笑いが小さく漏れる。
 胸がぎゅうっと締め付けられたような気がしたのは、祖国でのことを思い出したからなのか。
 それとも。
< 84 / 340 >

この作品をシェア

pagetop