愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!

12.攻撃は最大の防御だから

「ッ、だが普通はこんな形で嫁がされてそんなこと」
「言う女がここにいるじゃない」

 私の断言に戸惑っている様子のアルド殿下へ畳み掛けるようにそう伝える。

“それにこれは本当のことだもの”

 確かに普通なら、自分の命が危ない相手を好きになんてならないし実質ただの人質だとわかっているのならむしろ近付こうなんて思わないのかもしれない。

 けれど、私は差し出された手が温かいことをもう知ってしまったから。
 

「約束は、守って。私と恋をしてください」
「な……」

 ドキドキと痛いくらいに跳ねる心臓には気付かないフリをして、驚き固まっている殿下の顔へとゆっくり顔を近付ける。

 避けられるかもしれないと思いながらぎゅっと両目を瞑り、そのまま彼の唇があった場所を狙いながら顔を近付けると、避けなかったらしくふにっとした温かいものが私の唇と重なった。

 閨教育は習わなかった……というか、習わせて貰えなかったが、ジークがくれたロマンス小説で学んだので知識はあるのだ。 

「そう、これが口付けよ!!!」
「お前はムードというものを知らないのか?」
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