愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
“だけどそれって” 
「好きな人がいる前提でしょ!!」

 ウガッと威嚇するように口を開き両手を腰に当てる。
 かなり偉そうな態度だが、相手だって偉そうなのだからお互い様だ。


「自慢じゃないですけど私、初恋だってまだですから!」
「確かに自慢じゃないな。あ、いや……な、ならここで見つければいいだろ」
「じゃあ中枢の貴族とか誘惑してもいいってことですかぁ?」
「えっ、いや、流石にそれはっ」

 愛人にする候補を側近の貴族から選ぶとは思わなかったのか、再び形勢逆転しアルド殿下の方が戸惑う……ものの。

「まぁ、人質の私には知り合う方法なんてないわね」
「そ、そうだな……!」

 わざわざ王太子妃宮へ来てくれるような側近はいない。
 来たとしても様子見や、何か問題を起こしていないかの確認だ。

 好意的な意味は一切ないだろう。

“もし嫁いできたのが美しい姉たちなら話は別かもしれないけど”

 残念ながら私は社交で扇を持つより、訓練で剣を持つ方が多かったのだ。
 ぶっちゃけ効率的な誘惑の兵法なんて習ったことすらない。
 

「とにかく、勝手に恋をしろってことよね」
「あぁ、そうだ」
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