愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
「まだ初戦も終えてな……いや、そうじゃなくて寝るって言ったろ」
「まさかその寝るって夜伽じゃなくて睡眠ってことじゃないわよね?」
「俺は安眠を希望している」

 促されるままベッドに入るがバッサリとそう言い捨てられた。

「ほら、もう少し奥に詰めてくれ」
「え、うん……」

 言われるがままベッドの奥に行くと、当然のようにアルド殿下もベッドに入ってきて私は呆然としてしまう。

“まさか一緒に寝るってこと?”

 彼の行動の理由がわからない。
 
「夜の行為は、男性にとってとても気持ちいいって聞いたわ」 
「ごふっ、おま、なにを」
「なのに、しないのは何故ですか。私が泣いたから?」
「……。今日は色々あって疲れてるだろ、別に今日じゃなくてもいいと判断しただけだ」

“その言い方だと、ちゃんと次があるみたいじゃない”

 最初に言われたように、彼は私との離縁を目指していたはずだ。
 そしてその離縁の大義名分として、私の不貞を望んでいた。

 それなのに、私がこのまま彼の部屋で彼と一晩を過ごしてしまったら?

「実際は触れてなくても、もう離縁は難しくなるのに……」
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