愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
“なんでかわからないけど同衾まで許されたのよ? 今日こそ挑むべき事案だわ!”

「私が昨晩ここで過ごしたことはもう知られてるわ、何もなかったとどれだけ言ってもそれはもう通用しないのよ」
「なら尚更、なんでお前はそこまでこの行為にこだわるんだ。ある意味既成事実は作られたも同然だろう」
「それは……っ」

 だって、小説の中の二人はそうやって家族になっていったから。
 そしてこの行為の先に子供という、唯一無二の家族が誕生するのだ。

“どれだけ望んでも手に入らなかった家族の愛が手に入るかもしれないんだもの”

 欲しい、無条件に愛してもいい存在が。
 欲しい、無条件に愛してくれる存在が。


 思わずぎゅうっと両手を握ると、爪で手のひらを傷付けないようにかアルドが私の手を開かせてそっと握る。

「無理してすることじゃない」
「アルドは嫌なの?」
「俺は、――ッ」

 自分で聞いたくせに、彼から拒絶の言葉が出ることが怖くてベッドへと無理やり引き倒した私は彼を組み敷くようにして唇を奪う。
< 97 / 340 >

この作品をシェア

pagetop