愛されていない人質妻ですが、敵国王子の溺愛を所望中!
 今回も抵抗する様子のない彼に内心安堵した私は、流石に呼吸が苦しくなったタイミングでそっと唇を離した。の、だが。

「ん、んっ!?」

 いつの間にか私の後頭部へと回されていた手が離れた唇を再び重ね合わせるように引き寄せられた。

「……俺は、嫌だとは言っていない」
「アル……んっ」

 ちゅ、ちゅと角度を変えて何度か重なった唇。
 突然のことに動揺していると、そのままぐるんと転がるようにして私と体勢を入れ替えたアルドを、気付けば私はぽかんと見上げる。

「なんで」
「そっちこそ嫌じゃないのか。後悔は、しないのか」

“後悔?”

 言われて思わず首を傾げた。
 後悔なんて、そんなもの。

「私がするはずないじゃない!」

 ハッキリとそう断言すると、一瞬唖然とした表情になったアルドが思い切り吹き出して笑い出す。
 ロマンチックな場には似合わないその笑い声に釣られて私も思わず吹き出すと、小さく「わかった」と言ったアルドがふわりと微笑んだ。

 その表情にドキリとするが、笑ったお陰か変に力が入っていた私の体からはいい感じに力が抜けてそっと目を瞑る。
 するとすぐに再び唇が重なった。
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