キミのこと、好きでいてもいいですか?
私は、唇をきつく噛み締める。
正直、さっきからずっと胸の奥がザワザワとしていて落ち着かない。
千葉くんは、杏果ちゃんのことをどう思っているのかな?
もしかして、千葉くんが前に言ってた好きな子っていうのは……杏果ちゃんのこと?
だって二人は『杏果』『春翔くん』って、下の名前で呼びあってるから。仲が良いのは確か。
たとえ彼の隣にいるのが、私じゃなくても。
千葉くんがただ笑ってくれていたら。幸せでいてくれたら、それで良い。
そう思うのに……どうして私は、今の状況を素直に喜べないのだろう。
もし千葉くんが杏果ちゃんを好きなのなら、いま目の前で彼が楽しそうに笑っているのは喜ばしいことなのに。
「……っ」
胸のモヤモヤがいつまでもなくならない私は、重たい腰を上げた。
「ごめん、私ちょっと喉が渇いたから。飲み物買って来るよ。ついでにみんなの分も。お茶で良いかな?」
「えっ。ちょっと、美桜!?」
私を呼んだ香菜に返事もせず、逃げるように私はその場を後にした。