キミのこと、好きでいてもいいですか?

独り言にまさかの返事がきて、肩がビクッと跳ねる。


「美桜ちゃんは、バカじゃないよ」


聞き慣れた声がもう一度、すぐそばから聞こえた。


うつむいていた顔を上げると、そこにいたのは永倉くん。


「美桜ちゃん、こんなところにいたんだ。5人分のお茶、1人で持つの大変だろうなと思って追いかけて来た。はぁ……下駄で走るのキツっ」


永倉くんの、少しパーマがかったチョコレート色の髪が乱れている。


永倉くん……花火大会の途中なのに、わざわざ追いかけてきてくれたの?


「美桜ちゃん。もしかして、泣いてた?」


永倉くんが、私の目元の涙を指で優しく拭ってくれる。


「違うよ。これは、涙じゃなくて汗だから」

「へぇー。汗って目からも出るんだ? ……ねぇ、美桜ちゃん。俺の前では、無理しなくて良いんだよ?」

「……っ」

「泣きたいときは、泣けば良い」

「うっ、ううっ」


永倉くんに優しい声で言われて、(せき)を切ったように涙が溢れ出てくる。


「はい。これ、まだ使ってないから」


そう言って永倉くんが、私にハンカチを渡してくれる。


「あっ、ありがとう」


永倉くんのハンカチは、涙であっという間に濡れてしまう。


私って、こんなに泣く子だったっけ?
< 103 / 162 >

この作品をシェア

pagetop