キミのこと、好きでいてもいいですか?
独り言にまさかの返事がきて、肩がビクッと跳ねる。
「美桜ちゃんは、バカじゃないよ」
聞き慣れた声がもう一度、すぐそばから聞こえた。
うつむいていた顔を上げると、そこにいたのは永倉くん。
「美桜ちゃん、こんなところにいたんだ。5人分のお茶、1人で持つの大変だろうなと思って追いかけて来た。はぁ……下駄で走るのキツっ」
永倉くんの、少しパーマがかったチョコレート色の髪が乱れている。
永倉くん……花火大会の途中なのに、わざわざ追いかけてきてくれたの?
「美桜ちゃん。もしかして、泣いてた?」
永倉くんが、私の目元の涙を指で優しく拭ってくれる。
「違うよ。これは、涙じゃなくて汗だから」
「へぇー。汗って目からも出るんだ? ……ねぇ、美桜ちゃん。俺の前では、無理しなくて良いんだよ?」
「……っ」
「泣きたいときは、泣けば良い」
「うっ、ううっ」
永倉くんに優しい声で言われて、堰を切ったように涙が溢れ出てくる。
「はい。これ、まだ使ってないから」
そう言って永倉くんが、私にハンカチを渡してくれる。
「あっ、ありがとう」
永倉くんのハンカチは、涙であっという間に濡れてしまう。
私って、こんなに泣く子だったっけ?