キミのこと、好きでいてもいいですか?

私は毎日、春くんに学校でのこととか、テレビの話とか。ベッド脇でいつも何かしら、話しかけているけれど。


私がどんな話をしても、春くんからの返事はない。彼はいつだって、長い睫毛を伏せたまま。


春くんは、強いから。いつか絶対に目を覚ましてくれると信じていながらも、1週間2週間と、時間だけがただ虚しく過ぎていく。


「おはよう、春くん。今日は秋晴れで、とても良い天気だよ。だから、そろそろ起きて一緒に散歩にでも行かない?」

「……」

「ねえ、春くん。どうして目を覚ましてくれないの?」

「……」

「私、せっかく春くんのことを思い出せたのに。もしこのままずっと話せなかったら、嫌だよぉ」


涙を堪えきれなくなった私は、病室の床に膝から崩れ落ちる。


「春くん。お願いだから起きて。私に、春くんの声を聞かせてよっ!」


春くんが、私のことを好きでいてくれなくて良い。

両想いになりたいとか、余計なことはもう何も望まないから。

春くんがただ笑顔で、元気にサッカーをする姿を見られたらそれで良いの。

だから……。


「お願い。目を開けて、春くん……っ」
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