キミのこと、好きでいてもいいですか?
私が目覚めたときに、真っ先に抱きしめてくれたショートヘアの女性は、私のお母さんだった。
お母さんによると、私の名前は橘美桜というらしい。年齢は11歳の小学6年生。
詳しく話を聞くと、今から3ヶ月ほど前の3月――。
小学5年生だった春休み。
遠くに引っ越していく友達の見送りに行く途中、自転車に乗っていた私はトラックと衝突してこの病院に運ばれたのだとか。
とても大きな事故で全身を強打した私は、一時は死にかけたみたいだけど。
先生たちの懸命な治療のおかげで、なんとか一命を取り留めたのだそう。
しかし、頭を強く打ったのが原因で長らく意識不明の状態になり、3ヶ月間ずっと眠り続けていたらしい。
そして、梅雨入りが発表された6月中旬。私は、長い眠りからようやく目覚めたのだった。
「……そう、だったんですか」
お母さんからその話を聞いても、どうも自分のことだとは思えない。
事故の直前、私が会いに行こうとしていた友達が、とても大切な人だったってことは何となく分かるけど。
その友達が誰なのか。その子が、男の子なのか女の子なのかすらも思い出せない。
「あの、お母さん。その友達っていうのは……痛っ」
事故のことを思い出そうとするだけで、頭に激痛が走る。