キミのこと、好きでいてもいいですか?

「先生も、無理に思い出す必要はないって言ってたし。焦らずゆっくりいきましょう」

「うん。ありがとう」


お母さんに優しく背中をポンポンとされ、私はどうにか微笑む。


そうだよね。身体自体は、元気だし。


たとえ記憶がなくても、生活する上で支障はないって先生も言ってたから。もしこのまま思い出せなくても、大丈夫だよね……?


すでに怪我も完治し、記憶喪失以外のことは特に問題がなかったため、私は目覚めてから1週間ほどで退院することができた。


それからは小学校にも復帰して、最初は勉強とかクラスメイトのこととか、戸惑うことも多かったけれど。


みんなと過ごすなかで、私は少しずつ家族や友達の記憶を取り戻していった。


でも……事故のことや、その日私が会いに行こうとしていた友達のことだけは、いつまで経っても思い出すことができなかった──。
< 4 / 162 >

この作品をシェア

pagetop