キミのこと、好きでいてもいいですか?
「先生も、無理に思い出す必要はないって言ってたし。焦らずゆっくりいきましょう」
「うん。ありがとう」
お母さんに優しく背中をポンポンとされ、私はどうにか微笑む。
そうだよね。身体自体は、元気だし。
たとえ記憶がなくても、生活する上で支障はないって先生も言ってたから。もしこのまま思い出せなくても、大丈夫だよね……?
すでに怪我も完治し、記憶喪失以外のことは特に問題がなかったため、私は目覚めてから1週間ほどで退院することができた。
それからは小学校にも復帰して、最初は勉強とかクラスメイトのこととか、戸惑うことも多かったけれど。
みんなと過ごすなかで、私は少しずつ家族や友達の記憶を取り戻していった。
でも……事故のことや、その日私が会いに行こうとしていた友達のことだけは、いつまで経っても思い出すことができなかった──。