キミのこと、好きでいてもいいですか?

「あのね、いきなりで悪いんだけど。良かったらわたしも……春翔くんたちと一緒に、花火を見ても良いかな?」

「…っ!」


杏果ちゃんのお願いに、胸の内側にわずかに(もや)がかかる。


「一緒に来ていた友達が、急用で先に帰っちゃって。これから一人でどうしようかと思ってたの」


千葉くんの浴衣の袖をキュッと掴み、上目遣いで見つめる杏果ちゃん。


「ねえ、春翔くん。ダメ……かな?」

「いや、俺は全然ダメじゃないけど?」


優しい千葉くんなら、そう答えるよね。


「柊たちは、どう?」

「俺は、西野ちゃんは同じサッカー部の仲間だから。別に構わないよ?」

「橘と篠崎は?」


千葉くんに尋ねられ、香菜は私をチラッと見る。


去年杏果ちゃんとは同じクラスだったけど、正直友達っていえるほどの仲ではなかった。


でも、千葉くんや永倉くんにとって彼女は同じサッカー部としての付き合いもあるだろうから。


彼らのことを思うと、たとえ嫌だとしても『嫌』だなんて私には言えない。


「うん、私は良いよ。人数多いほうが楽しいだろうし。ね? 香菜」

「うん。あたしも……美桜が良いなら良いわよ?」

「ありがとう、みんな。突然割り込んでしまって、ごめんね。よろしくお願いします」


こうして急遽、杏果ちゃんも一緒に花火を見ることになった。
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