【辛口ヒューマンドラマ】私のしあわせな結婚−32
第17話
時は、夜8時55分頃であった。

ところ変わって、男性従業員さんの家にて…

この日も、弘樹《ひろき》は男性従業員さんの家に遊びに行った。

弘樹《ひろき》は、子どもさんが使っているプレステの格闘ゲームに夢中になっていた。

ご家族のみなさまは、ものすごくうんざりとした表情を浮かべながらつぶやいた。

度会《わたらい》の奥さまは、なにを考えているのか?

奥さまは、ダンナに暴力をふるっているのではないか…

またところ変わって、弘樹《ひろき》の家族たちが暮らしている県営住宅《だんち》の部屋にて…

(フギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャー…)

部屋の中で赤ちゃんが泣き叫ぶ声が聞こえた。

この時、里英《りえ》は弘樹《ひろき》が遊びに行った従業員さんの家に電話をかけていたが間違い電話ばかりがつづいた。

間違い電話をやらかした里英《りえ》は、大パニックを起こした。

どうしよう…

電話がつながらない…

ダンナはどこへ行ったのよ…

菜水《なみ》の泣き声がひどくなった…

どうしたらいいのよ…

さて、その頃であった。

またところ変わって、悠伍《ゆうご》の家族たちが暮らしている家にて…

菜摘《なつみ》は、キッチンで洗い物を終えたあとダイニングテーブルに向かった。

ダイニングテーブルには、悠伍《ゆうご》と亜弥子《あやこ》と晃代《てるよ》が座っていた。

テレビの画面にNHK総合テレビの夜8時45分の近畿地方のニュースが映っていた。

悠伍《ゆうご》は、読みかけの神戸新聞を四つ折りにたたんでテーブルに置いたあと怒った声で言うた。

「亜香里《あかり》はこんな時間までどこヘ行ったのだ!?…コーコーセーのくせにヨアソビなんてけしからん!!」
「あなた落ちついてよ〜」
「菜摘《なつみ》!!」
「あなた〜」
「菜摘《なつみ》も弘樹《ひろき》を甘やかすな!!」
「分かってるわよ!!」
「分かっているのだったら、弘樹《ひろき》に対してあしたここへ来るようにと言うておけ!!…『いそがしいいそがしいいそがしいいそがしいいそがしいいそがしいいそがしいいそがしい…時間が取れない時間が取れない時間が取れない時間が取れない…』…弘樹《あのクソガキ》はどこのどこまで甘えているのか!?」
「あなた!!」
「なんや!!文句あるのか!?」

たまりかねた亜弥子《あやこ》が困った声『ふたりともやめなさい!!』と言うた。

この時、時計のはりが夜8時59分になった。

晃代《てるよ》がリモコンを使ってチャンネルを替えようとした。

悠伍《ゆうご》は、怒った声で晃代《てるよ》に言うた。

「姉さん!!」
「なによぉ〜」
「チャンネル替えるな!!」
「姉さんは、(リモコン番号)10で放送されるシンデレラストーリーの映画を見るのよ〜」
「シンデレラストーリーなんかくだらん!!」
「なによケチ!!」

そこへ、スーツ姿で黒の手提げカバンを持っている新《あらた》がつかれた表情で帰宅した。

晃代《てるよ》は、のんきな声で新《あらた》に言うた。

「あら、今帰ったの?」
「今、残業を終えて帰ったところだよ!!」
「そんなに怒らんでもええやん~」
「起こりたくもなるよ!!…なにがシンデレラストーリーだ…シンデレラストーリーみたいな恋愛がそんなにいいのかよ!!」

新《あらた》は、ブツブツと言いながら空いている席に座った。

この時、テレビの画面は『NHKニュースウォッチ9』に替わったばかりであった。

晃代《てるよ》は、テレビのチャンネルを10に替えた。

この時、新《あらた》が怒った声で晃代《てるよ》に言うた。

「アネキ!!替えるな!!」
「なによ!!」
「シンデレラストーリーみたいなコイバナはいらつくのだよ!!」
「アタシが楽しみにしていた番組にケチをつけないでよ!!」
「やかましい!!」

(ブチッ!!)

たまりかねた亜弥子《あやこ》は、テレビの電源を切ったあと怒った声で言うた。

「ふたりともやめなさい!!ケンカするのだったらテレビを見ないで!!」
「なんやねんもう!!」
「ふざけるな!!」

亜弥子《あやこ》に怒鳴られた晃代《てるよ》と新《あらた》は、ふてくされた表情で席を立ったあと自分の部屋に入った。

なさけないわね…

亜弥子《あやこ》は、困った表情でつぶやいた。

さて、その頃であった。

またところ変わって、県営住宅《だんち》の一室にて…

里英《りえ》は、弘樹《ひろき》が遊びに行った男性従業員さん方の家に電話をかけていた。

しかし、間違い電話ばかりがつづいたのでひどく困っていた。

(フギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャーフギャー…)

この時、菜水《なみ》の泣き声がいっそうひどくなった。

どうしよう…

どうしたらいいのよ…

この時であった。

スマホのライン通話アプリの着信音が鳴った。

着信音は、りりあの歌で『貴方の側に』に設定されていた。

電話は、菜摘《なつみ》からであった。

里英《りえ》は、大急ぎで電話に出た。

「もしもし、里英《りえ》です…」

悠伍《ゆうご》の家族たちが暮らしている家にて…

うぐいす色のプッシュホンで電話をかけている菜摘《なつみ》は、困った声で言うた。

「里英《りえ》さん…武庫之荘《むこのそう》の京田でございます…弘樹《ひろき》はまだ帰ってないの?…またよその家に遊びに行ったのね!!…困ったわね…赤ちゃんがギャーギャー泣いているわよ…一体なにがあったのよ…あしたはなんの日かわかっているの!?…あしたは、弘樹《ひろき》が里英《りえ》さんと赤ちゃんと一緒にお礼を伝えに行く日よ!!…『時間が取れない時間が取れない時間が取れない時間が取れない時間が取れない…』…と弘樹《ひろき》が言うたので、うちは『時間が取れたらいつでも来てね…』と言うたのよ!!…それなのに、一度もうちに来ていないとはどう言うことよ!?…里英《りえ》さん!!パニック起こしている場合じゃないのよ!!…もしもし…間違い電話をやらかした…なんで間違いをやらかしたのよ…弘樹《ひろき》が遊びに行った従業員さんの家に電話したのに、なんで違う家につながったのよ!?…もうダメね…この際だから言うけど、弘樹《ひろき》とリコンすることを考えた方がいいわよ…あなた自身も、気持ちがたるんでいることに気がつきなさい!!…もしもし里英《りえ》さん!!メソメソと泣いている場合じゃないわよ!!…えっ?…もとのドウセイ相手からフクエンをせまられた…里英《りえ》さん…あなたはたしか、名古屋のデリヘル店で働いていたね…その時に知り合った客の男となんでドウセイしていたのよ…単にさびしかったから男とドウセイしていたと言わないでよ!!…あなたは、はじめから家庭を持つ資格はなかったのよ…あなたその前に、ちがう家のシソクと結婚していたわね!!答えなさい!!…あなたはなんで最初のダンナと結婚したのよ!?」

この時、受話器ごしから里英《りえ》がぐすんぐすんと泣いている声が聞こえた。

菜摘《なつみ》は、なおも怒った声で言うた。

「もしもし!!ぐすんぐすんと泣いている場合じゃないのよ!!里英《りえ》さんは、ほんとうはだれが好きだったの!?…ほんとうはだれと結婚したかったの!?…好きな人と結婚できなかったから、代わりを求める形で弘樹《ひろき》と結婚したと言いたいの!?」

受話器ごしから『ごめんなさい…ごめんなさい…』と言う泣き声が聞こえた。

菜摘《なつみ》は、ものすごくあきれた声で里英《りえ》に言うた。

「やっぱりそうだったのね…もうあきれたわよ…あなたは、大好きだった人の代わりを弘樹《ひろき》や最初のダンナに求めたのね…」

受話器ごしにいる里英《りえ》は、ぐすんぐすんと泣きながら『ごめんなさい…』と繰り返して言うた。

菜摘《なつみ》は、あきれた声で里英《りえ》に言うた。

「それじゃあ、あしたはうちに行くことができないのね…弘樹《ひろき》は、うちら家族にお礼を言うことができないのね…それじゃあ、亜香里《あかり》の学資保険《ほけん》を台無しにしたことをわびないのね…よく分かったわよ!!…それじゃあもうひとつ言わせてもらうけど…きょう…亜香里《あかり》が通っていたコーコーから電話があったわよ…あすの午後にコーコーに来てくださいと言われたのよ!!…弘樹《ひろき》ひとりのせいで、亜香里《あかり》がタイガクの危機にひんしたのよ!!…弘樹《ひろき》がわがままをこねたせいで…亜香里《あかり》が行くところをなくしたのよ!!…あなたのテイシュが犯したあやまちは…女房であるあなたが全部つぐなうのよ!!…もしもし聞いてるの!?」

この時であった。

受話器ごしから里英《りえ》の強烈な叫び声と赤ちゃんの焼け付くような泣き声と布がはげしく破れる音が響いた。

「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!あなた助けて!!」
「フギャーーーーーーーーーー!!フギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

(ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!)

(ガチャーン!!)

思い切りブチ切れた菜摘《なつみ》は、電話をガチャーンと切ったあと両手で髪の毛をグシャグシャにかきむしった。

日付が変わって、6月14日の深夜2時半頃であった。

ところ変わって、県営住宅《だんち》の部屋の玄関前にて…

弘樹《ひろき》は、男性従業員さんのご両親とお兄さまと一緒に帰宅した。

男性従業員さんのお母さまは、困った声で弘樹《ひろき》に言うた。

「弘樹《ひろき》さん!!弘樹《ひろき》さん!!」
「なんだよ~」
「おうちに着いたわよ!!」
「おうちなんかイヤだ〜」
「きみのおうちはここじゃないか〜」
「ぼくのうちじゃないのだよ〜」

そこへ、近所の住人の女性がやって来た。

住人の女性は、ものすごく困った声で言うた。

「もしもし。」
「はい?」
「度会《わたらい》のご主人と話がしたいのですけど…」
「こちらですけど…」

奥さまは、弘樹《ひろき》に対して怒った声で言うた。

「ちょっとご主人!!」
「はい?」
「こんな時間までどこに行ってたのよ!?」
「(従業員)んちでプレステしていた…」
「ご主人!!」
「はい?」
「この最近、お宅の娘さんの泣き声がひどいわよ!!」
「えっ?」
「あなたはなんで結婚して家庭を持ったのよ!?」
「自立したいから…」

奥さまに怒鳴られていた弘樹《ひろき》は、なおもいいわけがましい声で言うた。

この時であった。

従業員さんのお兄さまが『ドアのカギが空いてる…』と言うた。

このあと、奥さまが部屋に入った。

部屋の中にて…

部屋の中で里英《りえ》が全裸《はだか》の状態で横たわっていた。

その後、奥さまが浴室に入った。

浴室の床などがべちょべちょに濡れていたのを見た奥さまは、よりしれつな恐怖を感じた。

この時であった。

部屋の中から奥さまの叫び声が聞こえた。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!たいへん!!」
「どうしたのだ!?」
「赤ちゃんが浴槽に沈んでいたわよ!!」

弘樹《ひろき》はこの時、里英《りえ》と菜水《なみ》が殺されたことを聞いた。

「ワーッ!!」

頭がサクラン状態におちいった弘樹《ひろき》は、高いところから飛び降りた。

弘樹《ひろき》は、妻子を殺されたことなどを苦に命を絶った。

それから3時間後に里英《りえ》と菜水《なみ》を殺した男がケーサツに逮捕された。

容疑者の男は、里英《りえ》とドウセイしていた例の男だった。

容疑者の男は、ケーサツの取り調べに対して完全にモクヒした。

里英《りえ》の実家は、里英《りえ》をカンドーしていたので事件で亡くなったことを聞いても『知りません…』と言うて拒否した。

弘樹《ひろき》も、親類たちに見離されたので命を絶った知らせは届かなかった。

悲しい…

すごく悲しい…
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