【辛口ヒューマンドラマ】私のしあわせな結婚−32
第20話
時は、夜9時頃であった。

ところ変わって、悠伍《ゆうご》の家族たちが暮らしている家の広間にて…

広間のテーブルに悠伍《ゆうご》と亜弥子《あやこ》と晃代《てるよ》の3人が座っていた。

台所で洗い物をしていた菜摘《なつみ》がテーブルにやって来た。

新《あらた》は、職場で残業をしていたのでまだ帰宅していなかった。

亜香里《あかり》もまだ帰宅していなかった。

悠伍《ゆうご》は、四つ折りにたたんだ神戸新聞をテーブルに置いたあと菜摘《なつみ》に言うた。

「菜摘《なつみ》。」
「あなた。」
「日中、健介《けんすけ》となおみさんと孫たちがうちに来ていたね。」
「ええ…なおみさんは、お仕事の関係でこちらに来ていました…なおみさんは、お昼をいただくためにうちに帰ってきました。」
「そうか…健介《けんすけ》と孫たちは、昼前から夕方ぐらいまでうちにいたのだね。」
「ええ。」
「なおみさんは、今どこにいるのかな?」
「大阪市内のホテルに滞在しています。」
「うちには帰らないのか…」
「なおみさんは、イワマツグループのお仕事で海外のあちらこちらを移動なされているのよ~」

菜摘《なつみ》が言うた言葉に対して、悠伍《ゆうご》が怒った声で言うた。

「そんなことはわかっている!!…それよりも問題は健介《けんすけ》だ!!…健介《けんすけ》はいつになったら社会復帰をするのだ!?」
「健介《けんすけ》は、なおみさんに代わって健人《けんと》と生海《いくみ》の育児と家庭のことをこまごまとしているのよ!!」
「そんなことはわかっている!!…だけど、そろそろ再就職を考えた方がいいのではないかと言うたのだ!!」
「健介《けんすけ》は、自分からすすんで健人《けんと》と生海《いくみ》の育児をしているのよ!!」
「健介《けんすけ》は心のどこかで甘えているのだよ!!」
「あなた!!」
「男は外へお勤めに行けと言うてるのだ!!」

この時、近くに座っていた晃代《てるよ》が怒った声で言うた。

「うるさいわね悠伍《ゆうご》!!くだらないことをグダグダグダグダ言わないでよ!!」
「ねえさんには関係ない話だ!!」
「やかましいわねポンコツヤロー!!」
「オレのどこがポンコツだ!!」
「ポンコツをポンコツと言うたらいかんのかダメテイシュ!!」
「やかましい!!グータラ女!!」

見かねた亜弥子《あやこ》が怒った声で言うた。

「晃代《てるよ》!!悠伍《ゆうご》!!やめなさい!!」

亜弥子《あやこ》に怒鳴られた悠伍《ゆうご》は、ものすごく怒った声で菜摘《なつみ》に言うた。

「東京にいる遥輝《はるき》はどうしているのだ!?」
「遥輝《はるき》がどうかしたのですか?」
「東京にいる遥輝《はるき》から連絡はないのか!?」

近くに座っていた晃代《てるよ》が横から口をはさんだ。

「遥輝《はるき》は大手総合商社に内々定をもらったと言うたわよ〜」
「ねえさんは横から口をはさむな!!」
「悪かったわねポンコツテイシュ!!」
「やかましいナマケモノ!!」
「うちのどこがナマケモノよ!!」
「ふたりともやめなさい!!」

亜弥子《あやこ》に怒られた晃代《てるよ》は、ひねた表情を浮かべた。

悠伍《ゆうご》は、怒った声で言うた。

「遥輝《はるき》は、なにを学びたいから東京の大学へ行ったのだ!?」

晃代《てるよ》は、クソナマイキな声で『経済学を学びたいからでしょ〜』と言うた。

悠伍《ゆうご》は、怒った声で言うた。

「経済学部だったら、関西《ジモト》の大学にもあると言うた!!しかし、遥輝《あのヤロー》は東京の大学じゃないとイヤだと言うてわがままこねたのだ!!」
「あなた…」
「あと、亜香里《あかり》はこの最近ガッコーへ行ってないみたいだな!!」
「亜香里《あかり》は苦しんでいるのよ~」
「亜香里《あかり》を甘やかすな!!」
「甘やかしてないわよ!!」
「うるさいわねふたりとも!!」
「ねえさんは横から口をはさむな!!」
「やかましいポンコツテイシュとダメヨメ!!」
「義姉《おねえ》さまこそなによ!!」
「ふざけるな!!」

この時であった。

だらしないカッコウをしている亜香里《あかり》が帰宅した。

菜摘《なつみ》は、おどろいた声で亜香里《あかり》に言うた。

「亜香里《あかり》!!」
「なによ〜」
「こんな遅くまでどこでなにをしていたのよ!!」
「うるさいわね!!アタシがどこでなにをしようと関係ないわよ!!」

思い切りブチ切れた亜香里《あかり》は、部屋へ向かおうとした。

菜摘《なつみ》は『待ちなさい!!』と言いながら亜香里《あかり》の右手をつかんだ。

「待ちなさい!!」
「離してよ!!」
「亜香里《あかり》!!」
「離してと言うたら離してよ!!」
「亜香里《あかり》!!きょうの夕方頃にガッコーの先生から電話が来たのよ!!」
「なんで担任《センコー》がうちに電話をかけてきたのよ!?」
「亜香里《あかり》がガッコーに来ていないからなにかあったのかと心配になって電話をかけてきたのよ!!」
「アタシはあのガッコーに行きたくなかったのよ!!」
「亜香里《あかり》!!」
「ふざけるな!!アタシは弘樹《クソいとこ》のせいで人生がダメになったのよ!!」
「度会《わたらい》のおばさまは、亜香里《あかり》がコーコーに行くことができなくなったら困ると思ってアレコレと動いてくださったのよ!!」
「ふざけるな!!」

思い切りブチ切れた亜香里《あかり》は、菜摘《なつみ》をはらいのけたあとものすごく怒った声で言うた。

「アタシは、度会《わたらい》のババァのためにあのガッコーに通ってるのじゃないのよ!!…ババァのために行けと言うのであれば考えがあるわよ!!」

思い切りブチ切れた亜香里《あかり》は、ドスドスと足音を立てながら部屋に入った。

(バーン!!)

ドアがバーンと閉まる音が広間に響いた。

なによ一体もう…

晃代《てるよ》は、いらついた表情でつぶやいた。

またところ変わって、東京のカンパチ通り沿いにあるファミレスにて…

ファミレスの店内に都内の各大学に通っている若者たちがたくさん集まっていた。

この中に悠伍菜摘夫婦《ゆうごなつみ》の次男・遥輝《はるき》(23歳)がいた。

この時、都内の各大学に通っている学生たちによるゴーコンが行われていた。

遥輝《はるき》は、2年前に悠伍菜摘夫婦《ゆうごなつみ》に『内々定をもらえたよ…』と電話でウソを言うたあげくに大学をキュウガクしたようだ。

その後も、悠伍菜摘夫婦《ゆうごなつみ》からかかってきた電話に対して遥輝《はるき》は『インターン先の会社の人たちはやさしい人たちばかりだよ〜』などと言うてウソをつきとおした。

遥輝《はるき》は、今も大学3回生のままであった。

遥輝《はるき》は、大学を卒業するのがそんなにイヤなのか?

………………

話は戻って…

ゴーコンが盛り上がった時であった。

遥輝《はるき》のスマホのライン通話アプリの着信音が鳴った。

めんどくさい表情を浮かべている遥輝《はるき》は、スマホ丿ライン通話アプリをひらいたあと電話に出た。

電話は、菜摘《なつみ》からであった。

「もしもしかあさん〜」

菜摘《なつみ》は、うぐいす色のプッシュホンで電話をかけていた。

菜摘《なつみ》は、困った声で言うた。

「遥輝《はるき》…今どこにいるのよ…今どこにいるのと聞いているのよ!!…遥輝《はるき》…(大手総合商社)から内々定をもらえたのはほんとうなの!?」
「ほんとうだよ…今、カンパチ沿いのファミレスにいるのだよ…だから…新入さんたちのカンゲイ会に出席してるのだよ…信じてくれよ~」

遥輝《はるき》は、ものすごくいいわけがましい声で菜摘《なつみ》に言うた。

菜摘《なつみ》は、困った声で遥輝《はるき》に言うた。

「信じる信じないとは言うてないわよ…そんなことよりも遥輝《はるき》…一度、武庫之荘《ジッカ》へ帰ることはできないの?」
「なんで武庫之荘《ジッカ》に帰れと言うのだよ〜」
「遥輝《はるき》はほんとうに(大手総合商社)から内々定をもらったの?」
「もらったよ…インターンをへて正式な採用をいただいたよ…7月に配属先が決まる予定だよ…」
「どこに配属されるのよ?」
「決まったら知らせるよ!!」

菜摘《なつみ》は、ものすごく心配な声で言うた。

「遥輝《はるき》。」
「なんだよ〜」
「ほんとうに遥輝《はるき》は(総合商社)に就職できたの?」
「ほんとうだよ〜」
「もし、働くあてがないのであったら、川西の伯父《オジ》さまにお世話を頼むこともできるのよ。」
「なんで伯父《オジキ》を出すのだよ?」
「伯父《オジ》さまは、遥輝《はるき》を助けたいと言うてるのよ~」
「断るよ…どーせ市役所か農協しかないのだろ〜」
「市役所と農協に伯父《オジ》さまの知り合いの人がいるのよ~」
「オレは、ひとのコネを使って就職するのがイヤなのだよ!!」
「遥輝《はるき》!!」

(ガチャーン!!ツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツー…)

思い切りブチ切れた遥輝《はるき》は、ガチャーンと電話を切った。

困ったわね…

遥輝《はるき》にガチャーンと電話を切られた菜摘《なつみ》は、両手で髪の毛をグシャグシャにかきむしりながら怒りまくった。

時は流れて…

6月20日の正午過ぎであった。

またところ変わって、新《あらた》が勤務しているオフィスにて…

(キンコンカン〜)

正午《ひる》やすみを知らせるチャイムがオフィスに鳴り響いた。

新《あらた》がランチを摂りに外へ出ようとした時であった。

上司の男性が外へ出ようとした新《あらた》を止めた。

「京田くん。」
「課長。」
「これからどこへ行くのだ?」
「ランチを摂りに行くのですよ。」
「ちょうどよかった…これからわしと一緒にごはんを食べに行くのだよ。」
「えっ?」
「『えっ?』じゃあらへんねん…きょうは京田くんにわしの大事な人を紹介すると言うたのだぞ!!…聞いてないのか!?」
「課長の大事な人って?」
「はよ行くぞ!!」

新は、上司の男性に右手をひっぱられながら外へ出た。

またところ変わって、キタのお初天神通り(アーケード街)沿いにある高級割烹料亭《リョウテイ》にて…

リョウテイの奥座敷の部屋に新《あらた》と上司の男性となおみの3人がいた。

テーブルの上には、割ぽう重の特上セットが並んでいた。

上司の男性は、困った表情で新《あらた》に言うた。

「京田くん、紹介するよ…えーと…イワマツグループのリースバック会社の代表を務めている…京田なおみさんだよ~…京田くん…きちんとあいさつしなさい!!」

黒のレディーススーツ姿のなおみは、おだやかな表情で言うた。

「あら、あなたは…新《あらた》さんね。」
「えっ?…京田さんは…京田くんの…」
「義父のきょうだいです。」
「ああ、せやったのだ…知らんかった。」

新《あらた》は、コンワクした表情でなおみに言うた。

「あの…きょうは…どのようなお話が…ございますか?」

なおみは、やさしい声で新《あらた》に言うた。

「アタシは…新《あらた》さんに…しあわせになってもいいよとお伝えするためにここに来ました。」
「しかし…私は…2年前に三重子《まえのつま》とリコンしているのですよ…」
「新《あらた》さんがリコンした話は知ってますよ。」
「だから…しあわせになってもいいと言うのは…」
「京田くん!!…すんません…すんません…」
「いいのですよ…」
「あの…私は…しあわせになる資格は…ないのですよ。」
「あらどうして?」
「どうしてと聞かれても…分かりません。」

なおみは、おだやかな表情で新《あらた》に言うた。

「新《あらた》さん。」
「はい。」
「新《あらた》さん自身は、どう考えているかな?」
「どう考えているって?」
「新《あらた》さんは、どんな形で結婚相手《おあいて》と出会いたかったの?」
「どんな形って?」
「たとえばそうね…ぐうぜんの出会いとか…小さい時からの幼なじみの間で『大きくなったら結婚しようね…』と言うて指切りげんまんのヤクソクをかわした…とか…」
「そんな出会い方は…ありませんでした。」
「なかったのね。」
「だから結婚できなかったのです!!」
「そんなことはないわよ…なにも小さい時からの幼なじみだけが結婚相手《おあいて》じゃないわよ~」
「あの…結婚って、相手《おあいて》がいなきゃ意味がないことぐらい分かってますよ…相手《おあいて》がいないのに、どうやって結婚するのですか?」
「できるわよ…これから相手《おあいて》を紹介するのよ。」

なおみは、黒の手提げカバンの中に入っていた大きめのふうとうを出したあとふうとうの中から寿の字が書かれている写真《おしゃしん》を出した。

しかし、新《あらた》はつらそうな表情で言うた。

「すみませんけど…」
「あら、どうしたの?」
「やっぱり…考え直します。」
「どうして考え直すの?」
「自分ひとりの力だけで相手《おあいて》を見つけないといかんと感じたからです。」
「それは考えすぎよ…」
「それと、住むところがないのですよ…結婚生活を始めるための費用もないのですよ…」
「それだったら、ちょうどいい相手《おあいて》さんがいるから紹介するのよ…写真《おしゃしん》を見るだけでもいいから見てね。」

なおみは、寿入りの写真《おしゃしん》を新《あらた》に手渡した。

めんどくさいくさい表情を浮かべている新《あらた》は、写真《おしゃしん》をひらいた。

なおみは、おだやかな表情で新《あらた》に相手《おあいて》を紹介した。

「片岡ことはさん…38歳…まだ独身よ…イワマツグループのA班のメンバーで…保有している資格は、秘書検定一級・ワード・エクセル一級…あわせて30種類よ。」

新《あらた》は、つかれた表情でなおみに言うた。

「相手《おあいて》のことはよく分かりました…しかし、結婚したあと…」
「住まいのことは、心配しなくてもいいのよ。」
「ですが…」
「イワマツグループのメンバーたちは、1年のうち360日前後は海外のあちらこちらを動いているので…うちに帰宅する日は年に1〜2日くらいです…1年じゅう帰れない時もあります…」
「その間、どこで寝泊まりするのですか?」
「それは、世界各都市のホテルよ。」
「そうですか…」
「お見合いの日取りは、改めて調整するから…新《あらた》さんは、なんの心配もしなくてもいいのよ。」

新《あらた》は『お言葉を返す…』と言うたが、上司の男性がオタついた表情で新《あらた》の頭を両手でつかみながら怒った。

「京田くん!!」

上司の男性は、新《あらた》の頭を無理やり下げさせながら『お願いします!!』と言うた。

なおみは、にこやかな表情で言うた。

「それでは、お日取りが決まりましたらお電話をかけますね。」

このあと、3人は割ぽう重のセットでランチを摂った。

めんどくさい表情を浮かべている新《あらた》は、ランチを摂り始めた。

なおみは、上司の男性と楽しくお話をしていた。

(キュイーン!!)

さて、その頃であった。

またところ変わって、JR尼崎駅のすぐ近くにある阪神デパートの中にあるゲーセンのコーナーにて…

亜香里《あかり》は、この日もガッコーに行かずにアーケードゲームにボットウしていた。

今の亜香里《あかり》の気持ちは、ガッコーヘ行きたくないと言う方が強かった。

こんな気持ちで…

ガッコーに行くなんて無理よ…

度会《わたらい》のババァのためにガッコーに行けなんて…

ムジュンしてるわよ…
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