【辛口ヒューマンドラマ】私のしあわせな結婚−32
第21話
時は、夕方5時半過ぎであった。

またところ変わって、健介《けんすけ》の家族たちが暮らしているマンションの部屋にて…

マンションは、悠伍《ゆうご》の家族たちが暮らしている家から歩いて4〜5分のところにある。

健介《けんすけ》と健人《けんと》と生海《いくみ》の父子3人は、手作りハンバーグを作っていた。

この時、健介《けんすけ》のスマホのライン通話アプリの着信音が鳴った。

電話は、菜摘《なつみ》からであった。

健介《けんすけ》は、うんざりとした表情で電話に出た。

「もしもしかあさん…今なにしてるって…子どもたちと一緒に晩ごはんを作っているのだよ!!…予定変更してくれ…なんで予定を変更しろと言うのだよ…また直也がウキウキしているから来てくれ…ふざけるなよ!!…かあさんは、ぼくたち家族の予定をぶち壊してなにがしたいのだ!!…直也はなにを考えているのだよ…かあさんはお人好し過ぎるよ!!…高校時代に一緒にお弁当を食べた仲だからと言うけど、時と場合を考えてよ!!…ふざけるな!!」

思い切りブチ切れた健介《けんすけ》は、電話をガチャーンと切ったあとハンバーグ作りを再開した。

………

またライン通話アプリの着信音が鳴り響いた。

だれが出るか…

かあさんはなにを考えているのだ…

健介《けんすけ》は、怒った表情でつぶやいた。

健人《けんと》と生海《いくみ》は、健介《けんすけ》に対して声をかけた。

「おとーさん…」
「おとーさん…」
「なんだよ〜」
「電話が鳴ってるよ〜」
「おばーちゃんから電話だよ〜」
「出ない…」

それから数分後も、着信音が鳴りつづけた。

健人《けんと》と生海《いくみ》は、困った声で健介《けんすけ》に言うた。

「おとーさん…」
「おとーさん…」
「おばーちゃんが困っているよ。」
「電話に出てって…」

なんで電話に出なきゃいかんのだ…

健介《けんすけ》は、ものすごい血相で怒り狂いながらつぶやいた。

ところ変わって、悠伍《ゆうご》の家族たちが暮らしている家にて…

テーブルに菜摘《なつみ》と亜弥子《あやこ》が作った晩ごはんが並んでいた。

テーブルには、亜弥子《あやこ》と菜摘《なつみ》と健介《けんすけ》・健人《けんと》・生海《いくみ》の父子3人と健介《けんすけ》の幼なじみの塩見直也《しおみなおや》(30歳)と妻・伶香《れいか》(32歳)と長男・まなや(5歳)と長女・伶子《れいこ》(生後100日)がいた。

悠伍《ゆうご》と新《あらた》と晃代《てるよ》と亜香里《あかり》は、まだ帰宅していなかったので食卓にいなかった。

直也《なおや》は、職場でいいことがあったので菜摘《なつみ》に話したい…

いいことがあったから健介《けんすけ》とごはんが食べたい…

…と言うた。

健介《けんすけ》は、菜摘《なつみ》がどうしてもきてほしいと言われたことに対して腹を立てていた。

健介《けんすけ》は、怒った声で菜摘《なつみ》に言うた。

「かあさん!!お人好しもいいかげんにしろよ!!」
「だからごめんなさいと言うてるでしょ!!」
「なんだそのあやまり方は!!」
「きょうは、直也《なおや》くんがいいことがあったから健介《けんすけ》と一緒にごはんが食べたいと言うたのよ!!」
「直也《なおや》は、家でごはんを作って食べるのがそんなにイヤなのか!?」
「ちがうわよ…きょうは直也《なおや》くんが健介《けんすけ》と一緒にごはんを食べたいと言うたのよ…高校にいた時に一緒にお弁当を食べたことを忘れたの?」

亜弥子《あやこ》は、健介《けんすけ》に対してやさしい声で言うた。

「健介《けんすけ》、急な頼みを入れてごめんね…おかーさんは悪気があって予定変更を頼んだのじゃないのよ…きょうは直也《なおや》くんにいいことがあったのよ…手作りハンバーグはまたあした作ったらいいわよ…今から用意してあげるからね。」

このあと、伶香《れいか》は伶子《れいこ》のお食い初めの準備を始めた。

亜弥子《あやこ》は、みんなが食べるごはんとみそ汁をつぎ始めた。

亜弥子《あやこ》は、白いごはんが盛られている信楽焼きのお茶わんを直也《なおや》に渡しながら言うた。

「直也《なおや》くん…きょう、職場でいいことがあったのね。」
「あっ、はい…来月から始まる会社のプロジェクトチームのチーム長に任命されました。」
「チーム長に任命されたのね…」
「はい。」
「おめでとう。」
「ありがとうございます。」

みんなにごはんとみそ汁が渡ったあと、晩ごはんに入った。

この時、まなやがほしそうな目で健人《けんと》が食べているお肉の揚げ物をじっと見つめた。

それが原因で健人《けんと》が怒った。

まなやは『ワーン!!』と泣き出した。

まなやの泣き声を聞いた菜摘《なつみ》は、おどろいた声で言うた。

「一体どうしたの?」

健人《けんと》は『まなやがほしそうな目で見ていたから怒った!!』と言うた。

それを聞いた菜摘《なつみ》は、みんなに対して食べる手を止めてと言うた。

健介《けんすけ》は、怒った声で言うた。

「なんで止めるのだよ!!」

菜摘《なつみ》は、ものすごく困った声で言うた。

「ちょっと…まなやくんがなにをほしがっているのかを聞くから待って!!」

まなやの泣き声がさらにひどくなった。

「ワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーンワーン!!」

健介《けんすけ》は、怒った声で直也《なおや》に言うた。

「直也《なおや》!!」
「健介《けんすけ》くん〜」
「お前、なんとも思わないのか!?」
「怒んないでよ〜」

菜摘《なつみ》は出し忘れたものがないかどうかを確認したが、頭がサクラン状態におちいったのでおちついて物事を考えることができなくなった。

亜弥子《あやこ》は、大パニックを起こした菜摘《なつみ》に対して困った声で言うた。

「菜摘《なつみ》さん!!」
「義母《おかあ》さま!!」
「まなやくんの泣き声がうるさいわよ!!」
「義母《おかあ》さま!!まなやくんに出し忘れたものがないかどうかを今カクニンしています!!」
「菜摘《なつみ》さん!!」
「義母《おかあ》さまこそなによ!!」
「菜摘《なつみ》さんがイライラしていたら、まなやくんの泣き声がひどくなるわよ!!」
「義母《おかあ》さまは口出しをしないでください!!」
「冷静になってよ!!」

亜弥子《あやこ》と菜摘《なつみ》が怒号をあげたことが原因でまなやの泣き声がよりひどくなった。

同時に、伶子《れいこ》がよりしれつな泣き声をあげた。

この時、伶香《れいか》は伶子《れいこ》を乳房《むね》に抱っこしたあと庭へ出た。

「ひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっく…」

まなやは、ひっくひっくと泣き続けていた。

亜弥子《あやこ》は、ひっくひっくと泣いているまなやに対してなにが食べたいのかとたずねた。

「まなやくん…まなやくん。」
「ひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっく…」
「まなやくんは、なにが食べたいの?」
「ひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっく…」

亜弥子《あやこ》は、おからが入っている小皿をまなやにみせた。

「おからが食べたいの?」
「ちがう…ちがう…」
「おからは身体にいいのよ~」
「おからじゃない!!」
「なにが食べたいの?」
「ひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっく…」

亜弥子《あやこ》は、きんぴらごぼうが入っている小皿をまなやにみせた。

「それじゃあ、きんぴらごぼうかな?」
「ちがうちがう…」
「きんぴらごぼうじゃないの?」

亜弥子《あやこ》は、マッシュポテトが盛られている皿をまなやにみせた。

「それじゃあ、マッシュポテトが食べたいの?」
「ちがうちがう…」
「まなやくんはなにがほしいの?」

まなやは、ひっくひっくと泣きながら食べたいものを言おうとした。

この時であった。

「ふざけるな!!ぶっ殺してやる!!」

(ガチャーン!!)

この時、居間に置かれていた大きな花びんが割れる音が聞こえたと同時に亜香里《あかり》の怒鳴り声が響いた。

亜香里《あかり》は、ものすごい血相で怒り狂いながら菜摘《なつみ》を怒鳴りつけた。

「これはなんなのよ!!」
「亜香里《あかり》!!」
「よくもアタシをないがしろにしたわね!!」
「ないがしろにしてないわよ!!」
「それじゃあなんなのよこれは!!」
「きょうは、健介《けんすけ》おにいちゃんのお友だちのご家族が来ているのよ!!」
「ふざけるな!!」

(ガチャーン!!)

思い切りブチ切れた亜香里《あかり》は、近くにあったかたいものを食卓に投げつけた。

かたいものは、直也《なおや》の家族たちが食べる料理が入っている食器類を直撃した。

菜摘《なつみ》は、怒った声で亜香里《あかり》に言うた。

「亜香里《あかり》!!なんで健介《けんすけおにいちゃんのお友だちに暴力をふるうのよ!?」
「おかーさんはアタシよりも健介《けんすけ》おにいちゃんのお友だちがかわいいと言うたからよ!!」
「亜香里《あかり》!!」

この時であった。

亜香里《あかり》のおなかが少し大きくなっていたところを見た亜弥子《あやこ》がおどろいた声で言うた。

「亜香里《あかり》!!亜香里《あかり》!!」
「なによ!!」
「亜香里《あかり》!!このおなかはどうしたのよ!?」
「あんたにはカンケーないわよ!!」
「おばーちゃんは、亜香里《あかり》が心配だから言うたのよ!!」
「カンケーないって言うてるでしょ!!」
「亜香里《あかり》!!あんたもしかして…」

亜香里《あかり》は、クソナマイキな声で『ええそうよ〜』と言うたあと衝撃的な発言をした。

「アタシは、おなかが大きくなったのでコーコーをやめるわよ!!」
「おなかが大きくなったからコーコーをやめるって…亜香里《あかり》!!」
「アタシは、京田家《このいえ》ではいらない子だから出ていくわよ!!」
「そんなことはないわよ!!」
「やかましい!!アタシをないがしろにしたからぶっ殺してやる!!」

(ガラガラガラガラガシャーン!!)

このあと、亜香里《あかり》は食卓をひっくり返したあと家中を暴れまわった。

それから30分後に、亜香里《あかり》は家から飛び出した。

(ブーン!!ブーン!!)

それからまた40分後であった。

亜香里《あかり》は、家から500メートル先にいた暴走族の男が乗っているヤマハのナナハン(大型バイク)に乗ってどこかへ行った。

暴走族の男は、亜香里《あかり》が逆ナンで見つけたカレシだった。

この日を最後に、亜香里《あかり》は家に帰らなくなった。
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