君の見えない明日を、君の命に変えることができたなら。
「あ、千和って漫画読む?」

「え、急にっ…読まない」

「じゃあ好きな色は?」

「え、好きな色は…白かな」

「あ~!その感じもありだね!」

「その感じって何!?」

ぐりんって首を回してこっちを見て来たかと思えば質問攻めでロックオンで私を見て来る。

は、何なの?

しかも絶妙にどーでもよくない!?

「将来の夢は?」

「まだなんにも考えてないよ!」

「嫌いな時間は?」

「嫌いな時間!?」

本当にわけわかんない!

これで友達になろうってことなの!?

「じゃあ…」

ぐいっと顔を近付けた。

視界いっぱい柊真の顔で、柊真しか見えない。


「千和はオレに聞きたいことないの?」


「…!」


ドキッ、と脈を打つ。

心臓が大きく音を出した。


「あるでしょ、聞きたいこと」


上目遣いでくすっと笑うみたいに。

「……。」

一切瞬きもしないで私の瞳を離さない。 

ゴクリと息を飲む。

ドクンドクンなる胸の音を深呼吸でなだめて、ゆっくり口を開いた。


「病気って…何の病気なの?」


聞こうか迷っていて、聞けなかったこと。

聞いていいのかわからなくて聞けなかった。


私から離れて今度はやわらかい表情で笑った。


太陽が海に反射して少し眩しい、おだやかに揺れて薄く光るやわらかな色をしてる。


これがホリゾンブルーって言うのかな、なんとなくそう思った。


「ちょっとお腹痛くなっちゃう病気なんだよね」

「…え?お腹痛くなっちゃう病気?」

って、どんな病気?食べ過ぎとか?

いや、そんなんで死ぬわけ…

「どんどん痛くなっていっぱい痛くなって、何にも食べてないのに痛くなって、何も食べられなくなって最後には…そんな病気だよ」

「……。」


これが嘘とは思えなかった。

さみし気な顔で笑ったから。



きっと柊真は死ぬんだ。
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