君の見えない明日を、君の命に変えることができたなら。
海も青いけど空も青い。

下を見ても上を見ても青…

「どっちも全然違う青…」

リュックを枕にして防波堤にごろんと仰向けに寝転がって睡魔と戦っていた。

コンクリートがほんのりあったかくて気持ちいい、これが夏だったら耐えられないかもなぁまだ5月だからギリって感じ。

やば、眠い…

「千和!」

目を閉じようとしたらぬんっと視界に入って来た。

「柊真!」

「お待たせ!」

「お待たせじゃないよ遅いよ!待ちくたびれた!」

いつもみたいに学校帰りここへ来たけど全然来なくて今日はもう来ないのかと思った。

ササッと髪の毛を手ぐしで直しながら起き上がる。

「ごめん、ちょっとお腹痛くてさ~」

さすさすと右手でお腹を触る、その言葉にはちょっと敏感で。

「トイレこもってた!」

「……。」

てへっと舌を出して、それは…

「出すもん出したらスッキリしたね!」

「女の子の前でそんなこと言わないでくれるかな!?」

大丈夫そうだなこれは。生き生きしてるもん、たぶん出すもん出したから。

「じゃあ今日も続きしよ!」

あの日からこうしてほとんど毎日柊真と会っていた。

別に行くとこも他にないし、これで友達になれたかはわからないけど、私はいつでも寿命を交換するつもりなんだそんなことどうでもよかった。 

「柊真、すっごい絵上手いね!!?」

完成間近の絵を隣からひょこっと覗き込んで見せてもらった、色遣いがキレイで線も丁寧でただ遊びでかくにはもったいないくらい。

「そ?でもまだ完成じゃないよ~」

「私から見たらほぼ完成だよ、まだ塗るの!?」

「だって青は200種類あるんだよ?てことは他の色もそれくらいあるってことじゃん、まだ塗るとこあるよね」

……、ふーん。

もうなくない?

柊真の画用紙には海と向こう側に見える島とそこへ続く橋が描かれていて、全部色も塗ってあるけど…これ以上まだすることあるんだ。

私はもういいかな、展望台塗り終わったし。

「…それいつ完成するの?」

「ん~、あとちょっとかな」

「ふーん…」

またパレットに絵の具を出して水のつけた筆でくるくると回して色を見ている。もう塗り終えた私は筆をパレットの上に置いた。

「その絵が完成したら寿命交換しない?」

隣を見て、柊真が顔を上げるのを待った。

少し戸惑った表情で、だけどすぐにうんと頷いた。

「いいよ」

あと少し、私と柊真が友達でいられる時間はあと少し。
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