君の見えない明日を、君の命に変えることができたなら。
ダダダダッて勢いよく駆け上がった階段、泣きたくないのに目が熱くて嫌になる。

こんなことで泣きたくないのに。

「…千和」

はぁはぁと息をしていると階段の前のドアが開いた。

そこはお母さんの部屋、こっちへ来てからそのドアが開いてるのは初めて見た。

「お母さっ」

「もう少し静かに出来ないの?」

久しぶりに聞いたお母さんの声は凍てつくように冷たくて。

「おばあちゃんと言い合わないで、これ以上やめてよ。うるさく言われるの私なんだから、なんであんたはいっつもいっつも余計なことばっかり」

「……。」

はぁと重く息を吐く。

うんざりした表情から嫌悪をかもし出して。

「聞いてるの?」

呆れたように、目を細めて。

「余計なことはするなって言ってるの」 

その瞳は鋭くて。

「あの時だってそうなんだから…」

引く声から一気に高くなる。

「もっと上手くいったの、あんたが余計なことしたからこうなったの!」

どんどん声は大きくなって私を追い詰める。


「あんたのせいなんだから!!」


…何が?


何が私のせいなの?

お母さんのせいでしょ。

お母さんが悪いんでしょ。


どうして私が悪いの?


「あんたなんかいなければこんなことにならなかったのに…!」


じゃあ不倫なんかしなければよかったじゃん。

ずっとお父さんと仲良くしてればよかったじゃん。


「こんなとこ来なくて済んだのに…」

私だって好きでここにいるんじゃないよ。



私だってこんなとこ…


いたくなんかないよ。
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