君の見えない明日を、君の命に変えることができたなら。
次の日、約束通り日が暮れる少し前にあの神社へ来た。

私のが先に着いたみたい、まだ来てない。

教えてもらった石の前にしゃがみ込む、そぉっと右手を置いてつるんとした表面をなでる。

…確かに触った感じ不思議な気持ちのなるよね、やっぱそんな力があるから?

ちょっとあったかい気もするし、神聖なものに触ってるって思うと背筋が勝手に伸びる。

なんだろこの感じ…

「千和!ごめん、ちょっと遅れた!」

「ううん、まだ日は落ちてないから大丈夫!」

柊真が来た。

たぶん日が落ちるまであと数分、ニュースで日没の時間を見て来たから。

「ねぇ5秒間ってどこからの5秒間?日が落ちる前からの5秒?落ちてからの5秒?」

「ん~、そこはテキトーじゃない?」

「え、そんな感じなの!?それでイケるの!?」

「言い伝えなんだからそんな詳しく知ってる人いないもん、なんかノリで5秒経てばいんじゃない?」

えー…

そんなノリって、めっちゃラフだなぁ…

寿命の交換って結構一大事なのにそんなふらっと遊びに来ました!みたいなテンションで出来ちゃうんだ。

「あ、千和!そろそろだよ、手置いて!」

「うんっ」

一呼吸置いて右手を石の上に置いた。

心の中で5秒数える。

日が沈むのを確認しながら、草木に囲まれてちょっと見えづらいけど海の中に落ちていく太陽を追いかけて。

1、

2、

3、

4、

5…


「「……。」」


5秒経った、けどここからどうしたらいいんだろう?

もういいの?

これで交換って…

「出来た…!」

「え?」

すでに石から手を離した柊真が右手のひらを見つめていた。

「わー、すげぇ!すごかったね、ぐわーってなんか駆け巡って来る感じしたね!!」

…したかな?

私にはよくわかんなかったけど。

柊真がそう言うなら、出来たのかな。

「千和ありがとう!これでこれからも生きられるよ!」

にこっと笑って、歯を見せてうれしそうに。

そっか、もしかして病気の体からしたら私の寿命は体をラクにしてくれたのかもね。

3ヶ月で死ぬ体からもっと生きられる体になったんだから。


3ヶ月で死ぬ体から…


「どういたしまして」


あと3ヶ月…

ううん、柊真と会ってからもう1週間くらい経ってるから3ヶ月もないか。


「これからが楽しみだよ!」


あと2ヶ月とちょっと、これで終われるんだね私。
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