君の見えない明日を、君の命に変えることができたなら。
「山下さん!大丈夫!!?」

パチッと目を開けるとベッドの上だった。


えっと、ここはどこの天井…?

全然見たことない天井…


「大丈夫?痛いとこある?」

ぬっと私の顔を覗き込むように視界に入って来た。

いや、ちょっとわからないんだけど誰?おじさん…は言い過ぎか、20代くらいっぽいし。

爽やかな短髪で眉毛が凛々しい、全然見覚えのない知らない人…。


てゆーか、ここは…


「保健室のベッドは寝心地がいいよね」

保健室!!?え、なんで私保健室に…!?

「あ、そんな勢いよく…っ」

びっくりして布団をはぐように起き上がってしまった。

キョロキョロと見渡してみると本当に保健室だ。

これってうちの学校の保健室だよね?でもなんで保健室…

「山下さん大丈夫?廊下に倒れてたから、ごめんね抱き上げて運んで来ちゃったんだけど」

ベッドの前の丸椅子に座った…
知らない人が肩をすぼめて手を合わせぺこっと小さく頭を下げた。凛々しい眉毛に反して話し方はまろやかで耳心地がよかった。

「あ、僕は2年3組の担任の大橋政人(おおはしまさと)だよ」

大橋…先生、初めて話すと思う。顔も初めて見たし。

「山下さんは2年1組だよね」

でも私の名前を知っていた。

…先生だからそんなもんなのかな?クラス違っても名前と顔くらいは、転校してまだ1ヶ月ぐらいでも。

「具合はどう?」

「あ…もう大丈夫です」

少し寝たせいかお腹痛いのはどこかへ行ってしまっていた。
ずっと痛いわけじゃないんだ、これからだから一気に来る感じでもないのかな。

「今保健の香田(こうだ)先生がお母さんに電話してるんだけど繋がらないみたいで、もう少し保健室で休んで待っててもらえるかな」

「えっ」

「…?よくなかったかな?」

「あ、いえ!ありがとうございます…っ」 

お母さんに電話…
そっか、学校で倒れるとこんなことになるんだ。

しまった、うわ~…

でもたぶん来ないから。

はぁって息が漏れてしまった。

「山下さん」

「はいっ」

「学校には…」

あ、これは。

きっとそんなマニュアルでもあるんだ。
転校生がちゃんと新しい学校に馴染めたかどうか、先生たちも馴染めない生徒がいたら困るから。

聞かれるんだ…

“学校には慣れたか?”
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