君の見えない明日を、君の命に変えることができたなら。

give4.)

「今日の千和はクマがすごい」

「そーゆうの書かなくていいから」

「目の下にヒグマを飼っている」

「飼ってないから」

スラスラと鉛筆を動かしてノートに今日の研究結果を書いていく、研究結果って何って感じだけど。

昨日は上手く眠れなくて朝起きたら目の下がすごかった。寝不足ってこんなに体に変化が来るんだ。

最近は眠れない日が多くて、困る。

「昨日ごめんね、昨日っていうか昨日も」

「あー…ううん、友達と遊ぶの大事だし」

柊真はたまにしかここに来なくなった。

他の友達と遊ぶって言ってたし、病気じゃなくなった体はしたいこともあるのかもしれない。

だから私のことが後回しになっても別にいいし、しょうがない。


少しだけ、寂しいけど。


ごてんっとテーブルに顔を伏せた。

「千和?どうしたの?」

「お腹痛い」

「…大丈夫?」

ペタッとテーブルに右の頬をくっ付けて、海風のせいで髪の毛が舞って視界が悪い。

すっかりここも馴染んで来た、屋根付きのベンチとテーブルはいつも私たちしかいなくて心地いいから。

「こうやって苦しんで死んでいくのかな私…」

ほんのりキリキリするお腹を押さえる。

最近はずっとこうだ、お腹が痛くなる頻度が増えた。

死期が近付いてるのかな。

「でも不思議なんだ、痛みを感じるとね生きてるって思うの。私生きてるんだなーって嬉しくなるの…、死にたいって思ってるのに矛盾してるよね」

痛みだけが私を認めてくれるみたいで、なぜかよかったって心の中で思うの。

私を唯一味方してくれてるみたいな、そんな気がして。

「うん…」

柊真の声がかすかに聞こえた。こんなこと言われても答えようがないよね、何も言えないよね。
< 29 / 65 >

この作品をシェア

pagetop