君の見えない明日を、君の命に変えることができたなら。
「お母さん…っ」

勢いよくドアを開けて家の中に飛び込んだ。

すぐにおばあちゃんが障子戸を開けた。

「千和!そんなに大きな音立てて近所迷惑でしょ!」

でもそんなの関係なく廊下を抜けて無我夢中に階段を駆け上がる。

「あんた学校は!?学校行かないで何してたの!」

きっと自分の部屋から電話して来たんだ、おばあちゃんにも助けを呼べなくて私に…!

「お母さん…!」

ノックもしないでドアを開けた。ノックなんてしていられなかった。

「……!」

そこに飛び込んで来たのは床に倒れ込んで血を吐くお母さんだった。

「ちょっと千和あんた…っ」

追いかけて来たおばあちゃんがドアの向こうに目を向ける。

「八重…!?八重どうしたの!?」

黒ずんだ血に染まった床は一面に広がって、私の方が立っていられなくなる。


お、お母さん…

何、何があったの?

どうなっちゃったの?


私、えっと、どうしたらっ 


足も手も震えちゃって、頭が真っ白になる。


お母さんが…


お母さんが…



お母さんが死んじゃう…!



「千和!救急車!」

「……。」

「千和!!!」

おばあちゃんの怒鳴り声に飛びそうになった意識が戻って来る。

「すぐに救急車、電話して!!」

「は、はいっ」

スマホから救急車を呼んだ。

言われた通り呼ばなきゃって、もうそれしか考えられなくて。

ちゃんと話せてたかもわからない、必死だったから。

おばあちゃんが何度呼びかけても返事のないお母さんの背中を見ながら。


やだやだ、お母さん死なないで!


私を置いて行かないで!



もう誰も私を忘れないでよ…!!!




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