君の見えない明日を、君の命に変えることができたなら。
「山下さん」

翌日、おばあちゃんに学校に行きなさいって言われて全然気は向かないけど仕方なく登校した。ちっとも授業は頭に入って来ないし、来た意味があったのかはわからないけど。

「大橋先生…」

廊下の窓からぼぉーっと外を見ていると名前を呼ばれた。今日も胸ポケットに可愛い花のブローチが着いている。

「昨日は大変だったね」

「昨日…」

大橋先生も知ってるんだ、田舎町だからかな救急車が来ただけでも近所の人が大騒ぎしてたしこれもすぐにみんなに伝わっちゃってるの。

「山下さん、大丈夫?」

「あ、はい…私は大丈夫です」

「昨日は眠れた?」

「はい、えっと…」

「眠れないよね、心配だよねお母さんのこと」

背の高い大橋先生は少しかがんで目を合わせてくれる。

「僕に出来ることがあったら何でも言ってね、相談でも何でも聞くから」

しっかり目を見て、少し微笑んで。

「1人で抱え込まないでね」

またねって、2年3組の教室へ入って行った。

わざわざ声かけてくれたのかな、じゃなきゃ1組の方まで来ないよね。

「……。」

何でも聞くから、かぁ…

今日も防波堤行こうかな。

お母さんのお見舞いの前に少しだけ、柊真に会えたらいいな。


聞いてほしいことがある、言いたいことがある。


柊真と話がしたいよ。
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