ハイドランジア
誰からも気づかれず無事に教室をでたら、一歩先で朔くんがこっちを見ていた。
『……あ、あの、私、も体調が……』
『な。腹いてーの?』
『えっ、う、うん』
『そーか。お大事に』
そう言うとそのまま背を向けて保健室とは逆の方向へ歩き出した。
『………保健室行かないの?』
『俺はいい。今元気なった』
………?そんなことある。
疑問を抱きながらも、痛みが強くなっていくので急いで保健室へ駆け込んだ。
先生に大きめのカイロをもらってお腹をあっためたら、少しずつ痛みが和らいできて一安心する。
薬を飲んでしばらく横になってたら痛みも完全に引いてきて、授業終わりのチャイムと同時に教室へもどると、既に朔くんは自分の席に戻っていた。
体調悪いってなんだったんだろう。ただサボりたかっただけ?まぁそのおかげで救われたんだけど……。
よく分からない違和感を感じつつ自分の席に戻ると、ふわっと空気が動いた気配がした。