ハイドランジア
『せんせー、体調わりーから保健室行ってくる』
隣の席の男の子──朔くんの声が、静まる教室にクリアに響いた。
有無を聞かない朔くんの突拍子もない発言にクラスが一瞬ざわっとしたけれど、先生も特に止めるようす無く、
すぐに視線は黒板へと向けられ、授業が再開された。
すごいなぁ。私もこの人みたいに人目を気にしないで発言出来たらな。
つい、立ち上がった彼の視線を追いかけてしまった。
すると、つり目がちな朔くんと至近距離で目が合って
立て、と。
『……っ、え』
言葉も動作もなんにも交わしてないけれど、確かにそう言ったような気がして、私は朔くんの後を追い掛けたんだ。